車や船舶まわり,工場のパイプラインや流体機械中には,乱流とよばれる強い乱れをもつ流れが発生します.乱れにより壁面上で強いせん断応力,すなわち大きな流れの摩擦抵抗が生じるため,乱流には大きなエネルギーロスがともないます.つまり,省エネルギー社会の実現には,いかに乱流を制御するかが重要な課題として立ち塞がっています.その解決策として,界面活性剤や高分子をきわめて微量の濃度で液体に添加すると生じる乱流抑制現象が期待されています.ごく微量の添加にもかかわらず数十%もの摩擦抵抗の低減を達成できるため,この現象は簡便な乱流制御手法として利用されています.しかし,水や空気などのニュートン流体とは異なり,界面活性剤や高分子を添加した液体の物性は流れの状態と複雑な相互作用をするため,流れの支配方程式さえ明らかではありません.そこで我々は,流体力学での基本的な系における乱流の室内実験を通して,この現象の物理メカニズムの解明に挑戦しています.現在は,世界有数の大きさを誇る回転二重円筒間流れ(Taylor-Couette流)の実験装置で非常に発達した乱流を実現し,レーザーや高速度カメラによる流れの可視化実験や画像解析による流速測定技術を駆使した計測を行っています.